2012年9月11日号
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こころシェルター・消防団のいえ 〜東日本大震災から1年6か月を経て〜
 3.11東日本大震災に際して、私たちは災害時の地における人間の為の空間の在り方を考え、建築家のア正治さんとの恊働による「こころシェルター・すまい」「こころシェルター・コミュニティ」という避難所内での空間を創る活動をしてきました。

 そして2012年5月、陸中海岸の岩手県下閉伊郡山田町に、大震災後の恒久コミュニティー建築第一号である「こころシェルター・消防団のいえ」を建設し、山田町に寄贈しました。

 こころシェルターにはハーベストパネルが主材として使われています。それは、日本の茶室の歴史と東北の民家という風土との繋がりに最もふさわしい材料として、アさんがハーベストパネルに強く共感し選択してくださったからです。壁仕上材や天井の野地板として素地そのままで使用したハーベストパネルは、麦わらがところどころ金色に光るので藁を塗込んだ漆喰仕上の様に見えて素敵です。

 震災から丁度1年半の今日。今ヴェネチアで開催されているビエンナーレ第13回国際建築展に参加されているア正治さんに寄稿をお願いしました。ビエンナーレにはこころシェルターの模型も出品されています。




 
東日本大震災プロジェクト・こころシェルター消防団のいえへ
ア正治都市建築設計事務所
ア 正治

1990年から少子、高齢化が厳しい過疎地域に正面から向き合い、人々の交流や地域の活力を高め、持続可能な地方建築の在り方を具現化し、各市町村に提示し続けながら都市と農村の交流、市町村への政策コミュニティーデザイン、子供造形教室、ものびと建築塾、文化誌デザイン、地域デザイン等の提案、そして自らの介護体験を通して、地域の喜びと苦悩を背負う地道な活動を続けてきました。
2010年から心を基軸に自然災害や貧困、紛争地、日常生活などにおいて、助けを必要としている人々あるいは場所を支援するプロジェクトを開始しました。ロンドンで行われたArticle 25 主催の"Object of Change 2011"に参加し、展示作品はチャリティーオークションで販売され、売上金は世界の被災地への建築提言活動への基金となりました。
2011年3月11日に東日本大震災に遭遇しました。これを機に東北地方の被災地を支援する活動をこころシェルタープロジェクトと命名し開始しました。

〇原発被災地支援活動 福島県南相馬市2011について
苦しい人と向き合って、苦しい人を救いながら新しい世界を切り開いていくという信念のもと内部被曝が囁かれる中、被災者と避難所で寝食を共にし、原発の恐怖と闘いながら体を張って人間が人間らしく生きられ、心に少しでも安らぎを感じられる拠り所となる住まいと集会所を制作し寄贈しました。

〇大津波・地震被災地支援活動 岩手県山田町2012について
命がけで町を守り人命救助活動をしている消防団の崇高な精神に感動した私達は、経済や技術の産物としての建築、仮設や簡易な小屋や建物ではなく、この東北で再建すべきものは人間の尊厳であり大地と人々の心に捧げる建築、祈る建築、そして生者と死者が共に生きる鎮魂の建築を求めて建立し、未来にいのちを繋ぐ、風雪に耐えて建ち続け、後世に伝え、子供たちにつないでいきたいと思いました。
奥州平泉で育まれた浄土の哲学を継承し誰にも平等に光が届き、あまねく光が及んでいる空間(夕日が沈む頃、室内の奥まで光が差し込み、すべてが金色に染まります。人々は金色に包まれ、大自然と一体化することを実感します。)に人間の尊厳を建立しました。

主な掲載誌 新建築 9月号
  Dazed Magazine・イギリス
  TEDxTohoku
  Youtube
主な展覧会 第13回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展・イタリア
  明治神宮文化館
  Article25・イギリス
 




 建設のきっかけは、2011年の8月のある出会いによって、岩手県山田町消防団第十分団の震災時とその後の活動を知った事でした。
 地震直後に管轄している堤防の23箇所の水門を閉めに走り、津波で流され助けを求める人々を救助し、津波直後に発生して町中心部の全てを焼尽した大火と2日間不眠で格闘した消防団員たちは家族の安否も確認できないまま町の人々の安否を守る任務にあたりました。
 山田町消防団全体では9名の団員が殉死し、第十分団でも1名の団員が水門を閉めた後に波にのまれて殉死しました。

 実は私は、山田町消防団第十分団と知り合うまで消防団とは地域の「頼れるお兄さんお父さん衆」のボランティア活動なのだという事を知りませんでした。救助活動を職業人として行う消防署員と混同していたのです。あ、ちなみに女性団員も居るそうですが山田町は今の所、男性団員だけです。
 沿岸部での地震と津波で家、車、家財道具を失ってしまった消防団の団員の殆どは、この山田町に限った事ではないと思いますが、漁師さんです。つまり、団員の多くが仕事も失ってしまったのです。
 そんな状況、そして津波で屯所や機材も失ったなか、厳寒の時期に消防車のなかで寝泊まりしながらの救助活動、その後2ケ月以上に及ぶ捜索活動にあたった消防団の皆さんは「皆が再び集まって一致団結できる場所」「任務の合間に少しでも休息できる場所」を求めていました。

 その地の消防団の皆さんの為に、そして将来は山田町の文化芸能を伝承する為の活動基地として長く引き継がれる「こころシェルター・消防団のいえ」の建設活動に携われた事は大きな喜びであり、同時に1年半が経過した今も仮設住宅での不便な生活を強いられ、仕事の再開もまだ本格的には始まっていない皆さんが、一日も早く将来の希望と夢に向けて本格的な一歩を踏み出せる日が来る事を願っています。

 福島県南相馬市の避難所からスタートしたこころシェルター建設支援活動も、今日で丁度1年半を迎えました。新建築9月号に槙文彦氏が寄稿されている建築論壇「漂うモダニズム」のなかで氏が述べられている「共感のヒューマニズム〜人間と空間のありかた」に、こころシェルター活動の原点と共有する思いを感じ、深く感銘しています。 これからも、大事な事を忘れずに、さまざまな建築プロジェクトに関わっていきたいと思っています。

 こころシェルター・消防団のいえの海の舞台(テラス)に座って見る海の静けさ、西方の窓より差し込む夕日が家全体を金色に染める瞬間を感じる為に、陸中海岸の山田町に是非お訪ね下さい。


「こころシェルター・消防団のいえ」は新建築 2012年9月号に掲載されています。

こころシェルター活動の記録はFacebookでお読み下さい。
http://www.facebook.com/kokoro.shelter

AD WORLD 平澤潤子

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